子供の虫歯の特徴、年齢別の虫歯のできやすい場所と注意点、予防方法

2020年11月13日

執筆者:粕谷院長、志賀小児担当医

多くのお母様、お父様は、お子様に虫歯になってほしくないという気持ちから、歯磨きを嫌がる子供をなだめてなんとか歯磨きをしたり、仕上げ磨きに悪戦苦闘していることと思います。 実際、子供の虫歯だからといって軽く考えてしまうと大人になって影響が出てしまうこともあります。子供の虫歯の特徴や年齢別の虫歯のできやすい場所、予防の方法などを知って、お子様の健やかな成長に活かしていただければと思います。

子供が虫歯になりやすい理由って?

なにかで子供は虫歯になりやすいって読んだことがあるんですが、なぜなのでしょうか?

お口の中は通常、中性です。
ですが、飲み物を飲んだり、食べ物を食べたりすると酸性になります。お口の中が酸性だと歯は溶けます。
これが虫歯になる原因の一つです。

しかも、子供は大人と違って一回に食べる食事量が少なく、間食をする頻度が高くなります。
そのため、お口の中は酸性状態になりやすい環境なのです。

そのようなお口の環境で、虫歯の病原菌が活動する砂糖菓子を食べてしまうと、より病原菌が活性化して虫歯になってしまいます。
虫歯は食生活の乱れでなることはよく言われているとおり、子供の虫歯を予防する第一歩は、規則正しい食生活と間食の種類・時間に注意することです。

子供の虫歯は大人と比べて進行が早い!?

なるほど、子供が虫歯になりやすい理由は分かりました。
ほかに、大人よりも子供の方が虫歯の進行が早いって聞いたことがあるんですが、本当ですか?たしかに、そんな気がしますが・・・

はい、本当です。
子供の歯は大人の歯に比べて有機質をたくさん含んでいて、虫歯に対して抵抗性がかなり低くなります。
そのため、乳歯の虫歯の進行は大人に比べると、急性う蝕(虫歯の進行が早い)になりやすいのです。

しかも、大人の歯と比べると歯全体で神経の占める割合が高くなります。
そのため、穴を見つけた場合はかなり虫歯が進行しており、神経の近くまで進行していることが多いです。

子供が虫歯になりやすい場所ってあるの?

乳歯は虫歯になりやすいし、しかも進行が早いんですね。なるだけ虫歯にならないように、歯磨きをさせたり、仕上げ磨きをしてあげたいのですが、虫歯になりやすい場所はあるんでしょうか?

年齢によって虫歯になりやすい場所は違います。 理由は、食べ方と歯の生え方の順番、食形態にあります。

1歳~2歳

上の前歯がなりやすいです。

この時期はかじりとりで食べる時期ですので、上の前歯の裏側に食べ物が溜まりやすくなります。では、かじりとりを止めさせれば良いのかと言えば、それは絶対に止めてください。手づかみで食べ物をつかんでかじり食べる動きで、食べることを勉強している最中で、食育の観点から大切だからです。そのため、この時期は上の前歯の裏側は、お母様とお父様が歯磨きをして汚れをかき出してあげてください

また、飲み物の種類にも注意してください。哺乳瓶で飲ませている場合は、1歳頃からコップで飲む練習をしても良いと思います。最初の頃は持つのも飲むのも不安定なため、汚れても良い状況で飲ませてあげてください。飲料の種類は水かお茶にしてください。スポーツドリンクや透明な飲料などは避けてください。甘い飲料・乳酸飲料・野菜ジュースなどは糖類がふんだんに入っています。これは虫歯のリスクを高めます。

一番最初が肝心です。一度、本人が美味しいと判断すると欲しがります。泣くとそれを出してくれると判断した場合は、泣けば美味しいものが出てくると理解してしまいます。

2歳~3歳

奥歯の咬む面がなりやすいです。

ご飯や食べ物を奥歯で咬んで食べる時期となります。そのため、食べ物のかすが子供の歯の奥歯に溜まりやすくなり、そこに虫歯の細菌も溜まるため虫歯となります。

特に注意なのは上の奥歯です。お母様とお父様もお口を見る際に、上の奥歯は見えにくいため注意が必要です。

4歳~5歳

奥歯の間がなりやすいです。

子供の奥歯のさらに奥から第一大臼歯(お父様・お母様で言えば奥から2番目の歯)が生えるために動き始めます。その動きにより子供の奥歯は押されて、隙間があった子供の歯の間が詰まります。そこに汚れや細菌の塊があると虫歯になります。子供の歯の間は大人の歯と違い面で接触します。そのため歯の間の虫歯になると面で広がりますので、あっという間に虫歯になります

この歯の間の虫歯は、歯科医師でも判断が難しく、咬む面からは見えません。フロスや歯の色を見て一次判断をします。あやしいと思ったらレントゲンを撮影します。この歯の間の虫歯はレントゲンでないと精査はできません。現在の歯科医院にあるレントゲンはデジタルレントゲンが主流となっており、被曝量は日光浴程度となっていますのでご安心ください。

虫歯の数は減っていると言われていますが、5歳以降の虫歯の罹患率は5割を超えています。3歳までの虫歯の数は減っていますが、5歳から増える理由はいろいろあると思いますが、その一つがお菓子交換などの子供同士のコミュニケーションです。そのためご自宅には砂糖菓子をおかず、外出時のみに限定して与えると間食の量と種類が制限できます。

6歳~9歳

第一大臼歯(大人の歯でお父様・お母様の奥から2番目)の歯がなりやすいです。

第一大臼歯(大人の歯でお父様・お母様の奥から2番目)の歯が出てきます。大人の歯は子供の歯に比べて虫歯になりにくいと言いましたが、出たての大人の歯は非常になりやすい時期です。理由は大人の歯はある日突然、咬む面に存在するのではなくゆっくりと咬む面まで出てきます。そのため、出てきた当初は段差があり歯ブラシが届きづらく磨き残しが多くなりやすいです。

仕上げ磨きの卒業は小学生の高学年位までおこなってください。高学年となると、子供の精神発達上、二次反抗期となるため仕上げ磨きは困難になると思います。しかし、小学校低学年・中学年までは、本人の手先の技術では、まだ磨く技術がないため虫歯にしてしましやすい状態になります。そのため、仕上げ磨きは継続していただけると良いと思います

また、生えたての大人の歯は、1本磨き、もしくが先が尖った歯ブラシ(ワンタフトブラシ)で磨くと汚れが落ちます。

9歳~12歳

子供の歯の一番奥と第一大臼歯の歯の間がなりやすいです。

これは、子供の歯の奥歯との間に虫歯になりやすい現象と同じで、今度は第二大臼歯(お父様・お母様の一番奥の歯)が出るために動き始めているため隙間が詰まり汚れが溜まりやすくなることが原因となります。

子供の虫歯を放置した場合の影響は?

年齢によって虫歯になりやすい場所は分かりました。虫歯になりやすい場所を意識して歯磨きをさせたり、仕上げ磨きをしようと思います。ですが素朴な疑問として、乳歯のときだったら、どうせ永久歯に生え変わるので、最悪、放っておいてもあまり問題はないでしょうか?

虫歯になっても大人の歯に生え替わることはできます。しかし、子供の歯が虫歯になるとどんどん歯が小さくなります。それに合わせた歯並びになります。そうなると、すでに顎の骨の中に控えている大人の歯が出るスペースがなくなり出てこられなくなったり、変な場所に出てきたりと歯並びに影響が出ます。

歯並びが悪いと大人の歯の虫歯リスクや歯周病のリスクを高めることになります。この2つのリスクが高くなるということは、歯を失うことにつながります。歯を失うということは、美味しくご飯を食べることが出来なくなるということです。食は生物にとって基本となります。子供の成長や健康を願うのであれば、子供の虫歯を軽く考えてほしくありません。

子供の歯の時に虫歯になっている方は、大人の歯も虫歯になっている方が大半です。逆に子供の時に虫歯がない方は、大人になっても虫歯になりにくいです。これは統計で出ています。もちろん、大人になっても食生活が乱れれば虫歯になってしまいますが、食生活の乱れがなく健康にすごしていれば歯を失うリスクは格段に下がります

子供の健康を守るのはお母様とお父様の気持ち次第です。

子供の虫歯治療で気を付けることや注意点は?

そうですよね、乳歯だからといって放っておかず、親としてしっかり子供の健康のために虫歯にならないようケアしていきます。実際に虫歯になったときですが、自分が子供のころの記憶でも歯医者さんは怖い、痛いところって思い出があるのですが、子供の虫歯治療ではどんな工夫や対応がされるのでしょうか?

子供それぞれに個性がありますので、個性に合わせて治療を行います。

3歳~4歳は、精神発達の関係で音や光に敏感になる時期です。そのため、治療をする前に何をするのかを説明してから行います。
歯医者さんは基本的に音と光の洪水です。この時期の子供は恐怖しかありません。そのためなるべく恐怖心を軽減できるよう対応することが大切です。

それでも出来ない子もいます。
その場合は、無理には治療せず、虫歯の進行抑制の薬を塗って経過観察し、治療ができるまで精神発達した際に行います。緊急処置が必要な場合は抑制にて治療することがあります。

5歳~6歳は、想像の恐怖が出てきます。そのため、上記と同じように何をするのか事前に説明してから治療を行います。その日に突然行うことは、協力状態を得られない可能性があるからです。一番は安全に危険なく治療を行うことが大事です。

虫歯の大きさにもよりますが、基本的には麻酔は必ず行います。お父様もお母様も歯医者さんで麻酔なく削られたら痛いと思います。子供達も同様です。そのため、お母様とお父様にお願いがあります。もし、治療が必要で麻酔をする場合、それを脅しに使わないでください。例えば、よい子にしないと歯医者さんに行って歯を削ってもらう。痛くないから大丈夫、みたいに。

歯科の麻酔もなるべく痛くないように表面麻酔をしてから行いますが、それでも最初の針が入る瞬間は痛いです。そのため、治療する際は嘘を言わないでください。もし、痛いんじゃないの?麻酔を打つの?など聞かれたら、歯医者さんに行って聞いてみようと言ってみてください。嘘を言えば必ず信頼関係が崩れます。それでは信頼関係を築けず、治療の効率は下がり良い結果を得ることがお互いにありません。

子供の虫歯を予防する方法は?

ついつい、子供が歯医者に行くのを嫌がるので、痛くないよ!って連れて行きたくなりますが、それはダメですね。そもそも一番は虫歯にならないことだと思いますが、子供の虫歯を予防するにはどうしたら良いですか?

子供を虫歯にしたくないお父様・お母様には以下の点について注意していただければと思います。

一番は食生活を乱さないこと。これが一番の予防法です。埼玉県の歯科医院の先生が息子に歯ブラシの仕方を教えず、昔ながらのお菓子のみで過ごさせたところ虫歯にならなかったという記事があります。是非、読んでみてください。グーグルで「子供の歯ブラシ禁止 埼玉 歯科医師」で検索すれば出てきます。ただし、これでは歯周病になってしまうので歯ブラシは行ってください。

このことから、虫歯になってしまってから一番改善してほしいことは、歯ブラシの習慣ではなく間食などの食生活の改善です。これが乱れたままですと、虫歯を治してもまた虫歯になってしまい、堂々巡りでいつになっても治療が終わらなくなってしまいます。

あとは、一般的に言われている、フッ素とシーラントです。これは必要性に応じて行います。

定期検診の目的や意義は?

食生活を乱さない。たしかに、根本的にはそこですね。よく分かりました。他にも、子供の歯の健康的な成長のために必要なことはありますか?

小児歯科の治療で一番大事なことは、子供が健康に成長して、口の中で大人の歯がなんの障害もなく生え替わることです。それを見守ることが一番です。しかし、それが一番難しく、上手に生え変わらない可能性がないかをチェックすることが必要になります。

それが、定期検診となります。もちろん虫歯のチェックも大事ですが、一番は大人の歯にきれいに生え替わることです。きれいに生え替わるために虫歯にはなるべくなってほしくないのもありますが、定期的に通院することで、小さい虫歯のうちに発見することができます。

あとは、お父様とお母様の疑問点や不安なことなどを聞いて、その都度解決していくことができます。

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